みなさん、日本酒はお好きですか??
そりゃあもちろんお好きですよね。そんな、体の半分以上が日本酒で構成されているといっても過言ではない皆さん、急に会社から海外赴任を命じられたら、どうしますか!?しかも途上国に。
今や日本酒も海外展開を始めており、欧米諸国では手に入るらしいです。が、当然、途上国では手に入るわけもなく……。だからといって、重量にめちゃくちゃシビアな海外引越荷物に、あんなに重いもの1年分も2年分も詰めておけるわけがありません。
じゃあどうするか………。
………。
………。
……自分で作るしかないでしょう!!
と、いうわけで、私が海外で日本酒を一から作った記録を皆さんに共有しておきます。あくまで備忘録なので、読み物というよりレシピだけど、許してね。
注意・免責:日本国内で度数1%以上の酒類を製造することは、違法です(私は海外赴任中に醸造しました)。また、海外では自家醸造が合法の国が多いものの、法規制についてはご自身でご確認ください。あと、当然ですが、発酵商品なので、失敗して食中毒……とかも気をつけてくださいね。
用意するもの
日本から持って行ったもの
- 種麹:米麹の素。乾燥の種麹は、なんと常温保存可能(開封後は、シリカゲル入れてしっかり乾燥させて冷蔵保存すれば、数年持つらしい)。基本的には、日本でしか手に入らないので、すでに赴任済みの人は、遊びにくる友達に持ってきてもらいましょう。まあ、途上国に遊びに来てくれる友達がいれば……ですが。
もし荷物に余裕があるのであれば、種麹の代わりに、出来合いの乾燥麹や生麹を持っていくとめちゃくちゃ楽ですが、今回は、常温かつ軽量な種麹を使用しました。
私は、ネットでも定評があった京都菱六製の「長白菌小袋粉状」というやつを、かわしま屋というネットショップで購入しました。※アフィリンクではありません。
現地調達したもの
- 米(ジャポニカ米):そもそも日本酒は、米を発酵させる酒なので、米がなければどうにもなりません。調達できないのであれば、日本酒造りは諦めましょう。インド米でやったことはないですが……どうなんでしょうかね??うまくいかない気がします。デンプンの含有量とかそういう関係で。
以下、米麹造りでは必要ないが、次回日本酒の仕込み時に必要になるもの
- おいしい水:どうやら、日本酒は、水で味が決まるらしい。まぁ、そもそも途上国で作ろうってんですから、どだい上等な水なんて手に入らないんですけどね。まあ、水道水だけは避けましょう。
- ドライイースト:日本酒は、米麹菌と酵母菌で米を二重(同時)発酵させてつくる商品です。ただし、日本酒酵母は、酒造免許を持っていないと売ってくれません(閉鎖的すぎる……)。その時に代わりになるのが、ドライイースト。パン作るときのやつでOKです。
※アメリカでは、日本酒酵母が手に入るらしいです(Sake Yeastで検索)。また、酒粕から抽出する方法もあるらしいです。
- 乳酸菌が生きてそうなプレーンのヨーグルト:ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、麹菌とも酵母菌とは仲良しですが、他の菌類と険悪なので、不要な菌類の増殖を抑え、腐造を防いでくれます。乳酸菌顆粒や、ヨーグルトの種菌ならより良いらしい。
必要な器具
- 大きめの鍋複数
- 温度計
- 混ぜるやつ
- 【できれば】温度を維持できる器具(ヨーグルトメーカーとか、低温設定ができるオーブンとか)
- 根気(一番重要)
次回必要な器具
- 完成品を入れる容器(炭酸入れても大丈夫なやつ)
- 布巾か不織布
作業の流れ
「①米麹を作る」→「②米麹と酵母を混ぜて日本酒にする」の二段構えです。日本から米麹を持ってきたって人は、②からやってください。今回の記事では、前半の「米麹を作る」部分だけ解説します!
▼米麹完成以降の様子はこちら▼
- 米を超固めに炊く。
- ちょっと冷まして、種麹を入れて混ぜる。
- とにかく2日近くがんばってって保温する。
- 完成。
①米を超固めに炊く
本来の日本酒造りでは、米を蒸します。が、途上国に蒸し器があるわけもなければ、そもそもめんどくさい。ということで、今回は、先人にならって、米を超固めに炊くことでごまかします。
▼先人の知恵▼
目標は、「芯が残らない程度にギリギリまで水分量を減らしたご飯」。本当は、蒸した方が、炊きあがりのご飯に含まれる水分量を更に減らすことができ、より麹菌に適したご飯になるのですが、日本酒造りの場合は、この、水少なめ炊飯法で十分です。
今回は、米4合、水550ccでやりました。米の量は、私の購入した種麹に付属の説明書で4合と書いてあったので、それにならったものです。多分、2倍量、3倍量は、単純に材料を2倍3倍にすれば作れると思います。1/2倍量とかはどうでしょうかね。ロットが少なすぎると、もしかするとうまく菌が定着しない可能性もあります。私は安全を取って、説明書で担保されている4合を採用。
水の量を、通常の炊飯の60〜70%くらいにするだけで、あとは普通。炊飯前にしっかり研いで、しっかり浸水させて、炊きあがったらしっかり蒸らしましょう。私はいつも鍋で米を炊いており、火加減の調節に自信がないので、
水は米1合(180g)に対して「通常炊飯の目安:米の容積×1.2倍」の65%の水×4合分
=180×1.2×0.65×4
≒550cc
で計算しました。炊飯器をお持ちの方なら、60%とか、さらにもっと少量でもいけると思います。ただし、減らしすぎると、うまく火が通らず芯が残ります。気をつけて。
②ちょっと冷まして、種麹を入れて混ぜる
ご飯が炊け、しばらく蒸らしたら、かき混ぜたりしながら40℃くらいまで温度が下がるのを待ちます。米麹菌は、50℃近くなると死滅し始め、70℃にもなると、種麹でさえ失活するので、焦らずしっかり40℃程度まで下げましょう。ただ、下げすぎも、そのあと菌が繁殖しなくなるので注意。
40℃になったら、種麹を米に、まんべんなくふりかけます。私が使った量は、4g。本当は、1〜2gと、もっと少なくてもいいんですが、4合とロットが少ないのと、温度管理に自信がないので、多めに投入。ここは、多めにふりかけたほうが、菌の定着率が上がります。
茶こしでかけるといいらしい。一気にかけきらず、ある程度かけたら、手で刷り込むように混ぜ、またかける、という感じで、でも冷めすぎないよう素早くやりましょう。
③とにかく2日近くがんばってって保温する。
最初は、35℃くらいで12〜20時間保温します。保温は、ヨーグルトメーカーや、低温設定が可能なオーブン等があればベスト。ただし、設定温度ではなくて、米の温度が35℃くらいになるように調節してください。ない場合は、最悪、私みたいに毛布でぐるぐる巻きにして、燃えない程度にストーブの近くに置いておく、とかでもどうにかなります。全部の予定をキャンセルして、米の前で寝ずの番をしたりする必要はありません。
もちろん、温度設定をミスると、うまく米麹菌が定着しなかったり、その結果腐ったりしますが、まあ大体でいいのであったかめに保てていれば、だいたいどうにかなります。お菓子作りなんかよりは、断然温度テキトーでOK。
で、保温から20時間くらい経つと、結構米麹っぽい甘い匂いがしてくるので、ここで一回、ほぐすように混ぜます。
混ぜ終わったら、今度は更に40℃くらいで12時間保温。この頃になってくると、菌の発酵に伴う熱も出てくるので、とにかく温める、というよりは、保温してあげて、冷めてきたらちょっと助けてあげるという感じで見守ってあげましょう。
※逆に、温度の上がり過ぎにも注意!上がりすぎてるときは、混ぜて空気にふれさせつつ冷ましましょう。
ところで、結構保温ってのは、手がかかりますよね。友人に相談したところ、どうも米麹ってのは、ペットのように手間暇かけて育ててあげる必要があるようなので、せっかくなら名前をつけてはどうかということになりました。そうすると、甲斐甲斐しく世話をする気もでてきますよね(?)。ということで、友人が「こめにゃん」と名前をつけてくれました。
候補としては、「こめ子」とか「こめ男(こめお)」とかも挙がっていたんですが、この時代、やっぱりジェンダーを想起する名前は避けたほうが無難だろうということで、「こめにゃん」に落ち着きました。
④完成
というわけで、規定の時間が経過し、なんかあま~い感じになってたら完成です。米麹っていうと、毛がふさふさと生えているイメージですが、もしそうなってなくても、なんとなく発酵してる感じだったら大丈夫。米麹として完璧な状態でなくとも、とりあえず菌がしっかり繁殖していれば、次の行程に進むことができます。
ちなみに、完成した米麹は、5日間くらいなら冷蔵保存可能。水分含有量が多いので、早めに使い切りましょう。
それでは、次回は、ついに日本酒醸造のやり方と様子をお伝えします。
matsutet.hatenablog.jp
今回参考にさせていただいた先人の方々
担当:まつてと