ほこり日誌

エジプトは、漢字で「埃及」と書きます。

エジプトの豚肉と「ゴミの街」マンシェット・ナセル

皆さん御存知のとおり、ムスリムの皆さんって、豚肉食べないんですが、カイロでも養豚が行われているところがあります。それがマンシェット・ナセルです。しかし、この街は、通称「ゴミの街」としても知られています

今日は、そんな「ゴミの街」とコプト教徒の話です。

コプト正教会とは

御存知のとおり、エジプトは、アラブ国家ですし、イスラーム国家です。

が、その人口割合を見てみると、9割がイスラム教徒、1割がコプト教徒(キリスト教徒)。コプト教徒がマイノリティーであることは確かですが、十人に一人と考えると、意外に、他教徒の数が多い気もします。

コプト正教会とは、れっきとしたキリスト教の一派です。歴史的には、西暦451年のカルケドン公会議で分立し、以来、現在の主流派であるカルケドン派(カトリックやプロテスタントを擁する一派)とは袂を分かちましたが、古代教会の伝統を守っている歴史ある教派です。

例えば、酒類の製造は、コプト教徒の人々の独占産業ですし、コプト教徒は、イスラム教徒とは機微な緊張関係をはらみつつも、棲み分けつつ共存しています。

「ゴミの街」マンシェット・ナセル

ときに、マンシェット・ナセル(منشية ناصر)という地区が、カイロの東端にあります。「ゴミの街(Garbage City)」として知られており、その人口のほとんどは、コプト教徒。スラムであり、ゴミ処理と養豚を生業にしていることで知られています。

街の様子。至る所にゴミが積み上げられており、手作業で分別している。

カイロ中のゴミがここに運び込まれ、手作業で分別されていきます。聞くところによると、2000万人を数える大カイロ都市圏の約85%が、ここで処理され、そのうち8割程度がリサイクルされるとか*1*2

コプト教徒の知人は、「意外にごみ処理業は儲かる仕事で、マンシェット・ナセルに住む人は、貧しくはないのだ」と言っていましたが、果たしてどうでしょうか。街では、異常な数のハエがブンブンと飛び交い、異臭が立ち込めています

同地区では、ゴミを処理するとともに、集まった残飯を利用して、養豚が行われています(歴史的には、逆らしい。豚のエサのために、ゴミ回収が始まったそうな)。カイロの他の地区では決して見られない光景ですが、ブッチャーでは、豚が店頭にぶら下がっています。

エジプトでは、ゴミ収集を生業とする人たちは、「ザッバリーン(زبالين)」と呼ばれ、各地区を毎日巡回しては、ゴミを回収し、マンシェット・ナセルを含む処理拠点が集まる街に持ち込みます。

私は専門家でもないですし、カイロ在住歴も浅いのでなんとも言えませんが、ごみ処理が、少数教徒の独占産業というのは……。養豚を行っていることも相まって、被差別問題を抱えていると言われています。

日本語でも英語でも、マンシェット・ナセルについて調べると、リサイクルの街!サステナブル!とか、リサイクル率8割はすごい!とか、片面的に扱った記事を多く見かけますが、ちょっと慎重に考えるべきだと思っています。個人の感想ですが。

洞窟教会

さてはて、この地区には、「洞窟教会」と言われる教会があります。天然の岩肌に作られたもので、聖シモン教会を含め、大小いくつかの教会が点在しています。

この教会は、聖書に登場する、山を動かす奇跡を起こした「聖シモン」にちなんで名付けられたもので、1970年代に、ザッバリーンによって建設されました。

カイロ最大の教会として、マンシェット・ナセルのみならず、カイロ中の信仰者を集めています。

訪れる方向けの注)洞窟教会を個人で訪れる際は、Uberドライバーからマンシェット・ナセル行きを断られることがほとんどですので、街の外で降りて、流しのトゥクトゥクを捕まえて向かうことになると思います。距離としては歩くことも不可能ではありませんが、かなり途上国を旅慣れている人でなければおすすめしません。

ワゴン販売

エジプトは常夏(というより常真夏)と思いきや、実は結構激し目な季節の変化があるのを皆さんご存知でしょうか。そして季節の変わり目をワゴン販売の果物や野菜で知らされるエジプト住民は私だけではないはず。そこで今日は、皆さんが何を間違ったのかエジプトに迷い着いてしまった時にも、日本の土をいつか再び踏む日を夢見ながら時の経過を感じられるよう、季節ごとに変化するワゴン販売の一部を紹介したいと思います。

 

早速ですが、砂嵐吹き荒れる今この時期、登場するのがホオズキとそら豆です。ワゴン販売は八百屋やスーパーと同じようにキロ単位での販売になるので、「キーロー(1キロ)」「ヌスフ(500グラム)」「ルブウ(250グラム)」と言えば金額を言われます(「??」という顔をしていれば、英語で言ってくれると思います)。現金を渡すと、袋を「むっ」と突き出されるので、受け取って購入完了です。今回はお釣りが出ないよう、両方とも300グラムずつ、合わせて20ポンド分を購入しました。

ホオズキとそら豆

ホオズキとそら豆


ホオズキって食べられるんだ、とエジプトに来て初めて知りました。

皮を剥いたホオズキ

ホオズキの皮を剥くと中身はこんな感じ。プチトマトに近い見た目と食感ですが、味はトマトよりも少しクセがあります。なんと表現したら良いのか、独特の植物っぽい風味がします。サラダやヨーグルトのアクセントに良さそう。

そら豆のベッド

そら豆はこんな感じ。かなりちっこいです(小指の爪ぐらい)。でもちゃんとそら豆のベッドに入っていますね。日本だと皮を剥いて食べると思いますが、こちらは小さすぎて皮を剥くと無くなっちゃうんじゃないか、そら豆の10ポンドは何に払ったんだ?となってしまうので、私はこの中の皮は剥かずにそのまま頂きましたが、柔らかくて十分美味しかったです

 

ちなみにそら豆、エジプトではフールと呼ばれていて、茶色くなったそら豆をぐちゃぐちゃになるまで煮込んで潰したものが朝ご飯の定番料理です。このフール、ホテルの朝食ビュッフェでも必ずあるので、一度エジプトにいらっしゃったことのある方(のうち納豆みたいな匂いのする得体の知れないフールを試したことがある方)なら御存じかと思いますが、驚異的に腹持ちが良いです。ちょうど今ラマダン中で、私も先日断食前の食事(スフール、深夜1時ごろの食事)にエジプト人に連れられて行った時フールを食べましたところ、確かに午後まで全然お腹が空きませんでした!(夕方になってお腹が空いて、日が暮れる前にシャウェルマを頬張りましたが)

 

スフールの定番ラインナップ(赤白のお皿の上段、オイルまみれの豆がフールです)

 

続いてこちらはサボテン。サボテンは夏の果物です。皮を剥きやすいよう、購入時におっちゃんがナイフで切り込みを入れてくれます。基本的に無味無臭、食感はアロエ、水分補給感覚です。エジプト人は喉が渇いた時、水を買おうか、それともサボテンを買って夏の風情を感じようか、なんていう粋なことを考えているのでしょうかね?

夏の風物詩 サボテン

他にも、秋から冬にかけては、焼とうもろこしや焼き芋があちらこちらで美味しい香りを漂わせており、学校帰りと思しき若者たちがかぶりつく姿をよく見かけます。とうもろこしについては、みずみずしくて弾けるような実や、焦げ目が付いた何処か懐かしい味に香ばしさの追い討ちをかけてくる醤油といった、記憶の中の日本のとうもろこしの素晴らしさを教えてくれる、至ってシンプルな穀物という感じで美味しいです。焼き芋については、常にお口に入れる時はパンチを欲しているエジプト人は、これでもか、というほどチョコや砂糖をかけて甘くして食べています。私はそのまま頂きましたが、日本の冬に繰り広げられる「私は紅はるか派かな〜」「いやいや安納芋でしょ〜」といった他愛のない(?)会話がいかに高度であったかを思い知らされる、これまた素朴なお味となっております。ワゴンの上に石焼き芋器?のような石のオーブンを乗せてもくもく焼いているので、おうちで調理するよりもホクホクと美味しいです

ちなみにとうもろこしや焼き芋は、焼く前の状態でも購入可なので、エジプト人ママが大量に購入する姿もよく見かけます。スーパーで買うよりも消費の回転が早いので、新鮮な気がします。

とうもろこしとおっちゃん

ちなみに、もはやここまで来ると何処からがワゴン販売で何処からが八百屋なのか分かりませんが、フリーマーケットのように道端にシートを敷いて葉物野菜を販売している人や、「そこまで綺麗に並べられたら崩せないよ〜買えないよ〜」と思ってしまうほど美しいみかんピラミッドを乗せている人、はたまた、重たい金属のたるを担いでジュースを売る人や、「fフーーールッ!!!!」と高層階にも届く大声でそら豆の煮ものを売る人など、様々です。

 

皆さんも、もし気づいたらエジプトにいた!という場合は、是非ワゴンからの食材購入に挑戦してみてください。何か新たな気づきがあるかも。。。?

 

(文:はと)

 

 

エジプトで魚を買う①:「ブリ(鰤ではない)」

さて、今回は、カイロで魚を買う話です。

そもそも論として、カイロでは、魚は滅多と食べられません。アレキサンドリアやポートサイード、スエズなど地中海や紅海沿いの街では、魚介料理も多いですが、カイロの料理は、ほとんどが肉か炭水化物。スークに行ったり、スーパーに顔を出したりしても、そもそも生の魚介を扱っているところ自体があまりありません。

なんですが、やっぱり日本人として、魚なしでは生きていけませんよね。ということで、ザマーレク地区唯一の鮮魚店で、自炊用に魚を買ってみることにしました。

今回買った店

カイロでは、あんまり鮮魚店って見かけないので、ずっと通りかかるたびに気になっていた店。なんとなく、夏は衛生的な問題が心配な気がして避けていたんですが、冬になったので、買ってみることに。

26th July通りに面した、「اسماك الجمهورية(共和国の魚……??)」という店。同じ名前で、魚料理を売っている方の店舗と、生魚を売ってる方の店舗がありますが、生魚を売ってるのは、このロケーションのあたり。

今回始めてマジマジと並んでいる魚を見ましたが、しっかり氷で保冷されてるし、全体的に鮮度も抜群ではないものの、許せるレベルな感じがしました。とはいっても、私も魚の目利きのプロではないので、精々、目の濁りをチェックした程度ですが……。

まあ、結局、買うにあたっての一番の問題は、見たこと魚がいっぱいならんでいて、どの魚がなんの種類がわからないことですね。

とりあえず、今回は1種類だけ買いましたが、定期的に通っては少しずつ挑戦し、一種類ずつ明らかにしていきたいと思います。

今回買った魚

今回買ったのは、「ブリ」と呼ばれている魚です(鰤ではない)。

買ってきた「ブリ」

正直、とりあえず魚屋に行ってみたものの、全然知らない形のやつばっかり並んでるし、そもそもアラビア語で魚の種類なんてわかるわけもなく……。とりあえず、店主のおっちゃんのおすすめを買いました。お値段1匹で100ポンドほど。

帰ってから色々調べていると、アラビア語では、「بوري」で、要するに日本語でいうボラのことのようです。エジプトでは、ティラピアと並んで、魚介類の中では比較的よく食べられるらしい。

釣りをしない人は、ボラを食べる機会ってないんじゃないかなと思うんですが、川にも住んでるし、比較的沿岸に近い海にも住んでいる魚です。プランクトンを泥ごと食べて生活している魚なので、水質が悪いと結構匂いが気になるらしい。海で採れたボラなら比較的匂いはマシな傾向との噂。

さてはて、当然どこで採れたかなんてわかりませんし、ナイル川の水質はお世辞にも良いとは言えないので、めちゃくちゃに不安になってきました。

捌く

オーダーしたら、魚屋で捌いてくれたのかもしれませんが、まあ衛生的かどうかもよくわかりませんし、家で捌くことに。

ボラを捌くのは初めてなので、困ったなと思ってると、これぞまさにドンピシャのYouTube動画があるじゃあないですか。この時代、本当に便利になりましたよね。

特に気をつけるようなこともなんにもありませんが、最近、誤って包丁で手を切ってしまい、ふた針縫ったばかりなので、慎重に作業をしました。

おろし方は、3枚にしました。

調理・実食

ボラ系は、加熱するとふっくらすると、どこかのサイトに書いてあった気がしたので、とりあえず煮付けにすることに。

匂いが心配でならないので、しっかり目に霜降り。あと、エジプトでは高級品の生姜もふんだんに使います。

捌き方が下手くそで、アラが結構でてしまったので、一緒にアラ汁も作りました。

完成した「ブリ」の煮付け

味は、まあ食べてやらんこともないという感じ。川魚的な魚の生臭さが若干残っているものの、まあそういうものとして食べたら許せるレベルです。

もし川魚が得意でない場合は、避けたほうが無難かも。あとは、物理的に、身が結構薄かったですね……。脂はそれなりにのっていました。

うーーーーん、リピートするかと言われると、ちょっと迷うところ。とりあえず次回は、違うやつにチャレンジしてみます。

(文:まつてと)

海外で日本酒を自家醸造するぞ奮闘記〜その②:気になるお味は??

さて、急に途上国勤務になったにもかかわらず、日本酒が飲みたくて仕方がないまつてと。飲酒欲がまさって発狂してしまう前に、自家醸造しようと思い立ったのでした……。

前回、米麹が完成し、ついに日本酒を仕込むことになりました。

▼前回の記事▼

注意・免責:日本国内で度数1%以上の酒類を製造することは、違法です(私は海外赴任中に醸造しました)。また、海外では自家醸造が合法の国が多いものの、法規制についてはご自身でご確認ください。あと、当然ですが、発酵商品なので、失敗して食中毒……とかも気をつけてくださいね。

今回必要なもの

さて、ここで、日本酒を仕込むのに必要なものをおさらいしておきます。

  • 米麹「こめにゃん」:前回の記事で作ったもの。「こめにゃん」と名前をつけて、二日二晩大切に育てた
  • 米(ジャポニカ米):今回もまた、生米が必要です。
  • おいしい水:どうやら、日本酒は、水で味が決まるらしい。まぁ、そもそも途上国で作ろうってんですから、どだい上等な水なんて手に入らないんですけどね。まあ、水道水だけは避けましょう。
  • ドライイースト:日本酒は、米麹菌と酵母菌で米を二重(同時)発酵させてつくる商品ですが、日本酒酵母は、入手困難。その時に代わりになるのが、ドライイースト。パン作るときのやつでOKです。
    ※アメリカでは、日本酒酵母が手に入るらしいです(Sake Yeastで検索)。また、酒粕から抽出する方法もあるらしいです。
  • 乳酸菌が生きてそうなプレーンのヨーグルト:ヨーグルトに含まれる乳酸菌が、腐造を防いでくれます。ヨーグルトをそのままぶっこめばOKだが、乳酸菌顆粒や、ヨーグルトの種菌ならより良いらしい。

必要な器具

  • 大きめの鍋複数
  • 完成品を入れる容器(炭酸入れても大丈夫なやつ)
  • 温度計
  • 混ぜるやつ
  • ざる
  • 【あれば便利】漏斗
  • 根気(一番重要)

作業の流れ

前回、米麹を作りましたが、ここまでくれば、あとは混ぜて、放置して、濾して完成。

  1. 再び米を超固めに炊く。
  2. 全部混ぜる。
  3. 一日一回かき混ぜながら見守る。
  4. 濾して、残りカスもめちゃくちゃ絞る。
  5. もう1日だけ待つ。
  6. 完成。

①再び米を超固めに炊く。

再びです。今回は分量を3合にするだけです。以下、前回記事からほぼコピペ。

目標は、「芯が残らない程度にギリギリまで水分量を減らしたご飯」。本当は、蒸した方が、炊きあがりのご飯に含まれる水分量を更に減らすことができ、より適したご飯になるのですが、水少なめ炊飯法でも十分。

今回は、米3合、水420ccでやりました。倍量にする分には問題ありませんが、これより減らす場合は注意が必要です。ロットが少なすぎると、もしかするとうまく発酵しない可能性があります

水の量を、通常の炊飯の60〜70%くらいにするだけで、あとは普通。炊飯前にしっかり研いで、しっかり浸水させて、炊きあがったらしっかり蒸らしましょう。私はいつも鍋で米を炊いており、火加減の調節に自信がないので、

水は米1合(180g)に対して「通常炊飯の目安:米の容積×1.2倍」の65%の水×3合分
=180×1.2×0.65×3≒420cc

で計算しました。炊飯器をお持ちの方なら、60%とか、さらにもっと少量でもいけると思います。ただし、減らしすぎると、うまく火が通らず芯が残ります。気をつけて。

②全部混ぜる

炊きあがったご飯に、1.5Lの水をぶち込みます。熱いご飯に米麹とかイーストとか入れると、菌が死滅するので、先に水を入れること

あとは、作った米麹300g(ほぐして入れよう!)、イースト少々(5〜8gくらい)、ヨーグルト1さじを、消毒済みのでっかい容器に入れて、完璧に混ざり切るまで混ぜまくります。

混ざったら、密閉されないようにふわっと蓋をしておきます。

全部混ぜた様子。

③一日一回かき混ぜながら見守る

20℃〜30℃くらいに保ち、一日一回かき混ぜながら様子を見守ります。20℃で7~10日、温度が高いと3~5日で完成らしい。様子を見ながら、発酵しきるのを待ちましょう。

ちなみに、当然今回も名前を付けることになり、例の友人が「みきそん」と命名してくれました。混ぜてるから「みきそん」……あまりに安易すぎて、友人の思考回路が心配になります。

④濾して、残りカスもめちゃくちゃ絞る

さて、今、この米のカスとかが浮いている状態が「どぶろく」です。これを濾します。

ザルの上に、清潔な布巾か不織布(私は、煮沸消毒しました)を敷き、全部濾します。容器に残ったカスも、すべて布巾に空けきってください。

で、コーヒーみたいに時間が経てば、液体は全部流れ落ちるかというと、残念ながらめちゃくちゃ時間をかけても、自重では完璧には落ちていきません。仕方がないので、布巾を閉じて絞ります

これ、めちゃくちゃ力入れても、人力では全然絞れないんですよね。酒蔵では、機械を使って絞るそう。ガッデム。がんばろう。
※酒蔵での製造では、「荒走」とか「中汲」とか「責め」とかなんとか、絞るフェーズにもこだわっています。が、今回は、別に大吟醸でもなければ、ただの簡易式の日本酒醸造なので、歩留まりは多いほうがいい。ということで、できる限り絞ります。

ちなみに、こうして布巾に残った謎のカスこそが、酒粕です。粕汁とか甘酒にして早めに使い切りましょう。残ったら冷凍もできるらしい。

使い道がありそうで限られてる酒粕。

⑤もう1日だけ待つ

絞りきった汁が、即ち日本酒なんですが、瓶とかに詰めたあと、もう半日だけ常温で寝かせ、瓶内発酵させます。発酵の作用で、炭酸とか出るので、密閉しても炭酸で爆発しない容器にしましょう。

半日経ったら、あとは冷蔵保管しましょう。

最初は日本酒っぽくないですが、段々と濁りがおりてきて、若干黄色がかった日本酒になります。

⑥完成

完成しましたね。手作りで、工場と比べ、消毒も完璧ではないと思いますので、早めに飲み切りましょう

完成品の様子。写真が下手すぎて、10年前にコンデジで撮った写真みたいです。

気になるお味

今回初めて作ったんですが、結論から言うと、いまいちですね。アルコール度数は十分なんですが、味は、感じでいうと、鬼殺しを更に水で割ったみたいな味。そもそも精米度合いも純米ですし、なんたってイースト菌ですしね。

ただ、温度管理とかをもっと見直せば、まだまだ改善の余地はありそうです。結構しんどかったので、今度作るのは、またあったかくなった時期になると思いますが、また新発見があれば、みなさんにご報告します。

今回参考にさせていただいた先人の方々

担当:まつてと

海外で日本酒を自家醸造するぞ奮闘記〜その①米麹を作る:命名「こめにゃん」

みなさん、日本酒はお好きですか??

そりゃあもちろんお好きですよね。そんな、体の半分以上が日本酒で構成されているといっても過言ではない皆さん、急に会社から海外赴任を命じられたら、どうしますか!?しかも途上国に。

今や日本酒も海外展開を始めており、欧米諸国では手に入るらしいです。が、当然、途上国では手に入るわけもなく……。だからといって、重量にめちゃくちゃシビアな海外引越荷物に、あんなに重いもの1年分も2年分も詰めておけるわけがありません。

じゃあどうするか………。

………。

………。

……自分で作るしかないでしょう!!

と、いうわけで、私が海外で日本酒を一から作った記録を皆さんに共有しておきます。あくまで備忘録なので、読み物というよりレシピだけど、許してね。

注意・免責:日本国内で度数1%以上の酒類を製造することは、違法です(私は海外赴任中に醸造しました)。また、海外では自家醸造が合法の国が多いものの、法規制についてはご自身でご確認ください。あと、当然ですが、発酵商品なので、失敗して食中毒……とかも気をつけてくださいね。

用意するもの

日本から持って行ったもの

  • 種麹:米麹の素。乾燥の種麹は、なんと常温保存可能(開封後は、シリカゲル入れてしっかり乾燥させて冷蔵保存すれば、数年持つらしい)。基本的には、日本でしか手に入らないので、すでに赴任済みの人は、遊びにくる友達に持ってきてもらいましょう。まあ、途上国に遊びに来てくれる友達がいれば……ですが。
    もし荷物に余裕があるのであれば、種麹の代わりに、出来合いの乾燥麹や生麹を持っていくとめちゃくちゃ楽ですが、今回は、常温かつ軽量な種麹を使用しました。
    私は、ネットでも定評があった京都菱六製の「長白菌小袋粉状」というやつを、かわしま屋というネットショップで購入しました。※アフィリンクではありません。

現地調達したもの

  • 米(ジャポニカ米):そもそも日本酒は、米を発酵させる酒なので、米がなければどうにもなりません。調達できないのであれば、日本酒造りは諦めましょう。インド米でやったことはないですが……どうなんでしょうかね??うまくいかない気がします。デンプンの含有量とかそういう関係で。

以下、米麹造りでは必要ないが、次回日本酒の仕込み時に必要になるもの

  • おいしい水:どうやら、日本酒は、水で味が決まるらしい。まぁ、そもそも途上国で作ろうってんですから、どだい上等な水なんて手に入らないんですけどね。まあ、水道水だけは避けましょう。
  • ドライイースト:日本酒は、米麹菌と酵母菌で米を二重(同時)発酵させてつくる商品です。ただし、日本酒酵母は、酒造免許を持っていないと売ってくれません(閉鎖的すぎる……)。その時に代わりになるのが、ドライイースト。パン作るときのやつでOKです。
    ※アメリカでは、日本酒酵母が手に入るらしいです(Sake Yeastで検索)。また、酒粕から抽出する方法もあるらしいです。
  • 乳酸菌が生きてそうなプレーンのヨーグルト:ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、麹菌とも酵母菌とは仲良しですが、他の菌類と険悪なので、不要な菌類の増殖を抑え、腐造を防いでくれます。乳酸菌顆粒や、ヨーグルトの種菌ならより良いらしい。

必要な器具

  • 大きめの鍋複数
  • 温度計
  • 混ぜるやつ
  • 【できれば】温度を維持できる器具(ヨーグルトメーカーとか、低温設定ができるオーブンとか)
  • 根気(一番重要)

次回必要な器具

  • 完成品を入れる容器(炭酸入れても大丈夫なやつ)
  • 布巾か不織布

作業の流れ

「①米麹を作る」→「②米麹と酵母を混ぜて日本酒にする」の二段構えです。日本から米麹を持ってきたって人は、②からやってください。今回の記事では、前半の「米麹を作る」部分だけ解説します!

▼米麹完成以降の様子はこちら▼

  1. 米を超固めに炊く。
  2. ちょっと冷まして、種麹を入れて混ぜる。
  3. とにかく2日近くがんばってって保温する。
  4. 完成。

①米を超固めに炊く

本来の日本酒造りでは、米を蒸します。が、途上国に蒸し器があるわけもなければ、そもそもめんどくさい。ということで、今回は、先人にならって、米を超固めに炊くことでごまかします

▼先人の知恵▼

目標は、「芯が残らない程度にギリギリまで水分量を減らしたご飯」。本当は、蒸した方が、炊きあがりのご飯に含まれる水分量を更に減らすことができ、より麹菌に適したご飯になるのですが、日本酒造りの場合は、この、水少なめ炊飯法で十分です。

今回は、米4合、水550ccでやりました。米の量は、私の購入した種麹に付属の説明書で4合と書いてあったので、それにならったものです。多分、2倍量、3倍量は、単純に材料を2倍3倍にすれば作れると思います。1/2倍量とかはどうでしょうかね。ロットが少なすぎると、もしかするとうまく菌が定着しない可能性もあります。私は安全を取って、説明書で担保されている4合を採用。

水の量を、通常の炊飯の60〜70%くらいにするだけで、あとは普通。炊飯前にしっかり研いで、しっかり浸水させて、炊きあがったらしっかり蒸らしましょう。私はいつも鍋で米を炊いており、火加減の調節に自信がないので、

水は米1合(180g)に対して「通常炊飯の目安:米の容積×1.2倍」の65%の水×4合分
=180×1.2×0.65×4
≒550cc

で計算しました。炊飯器をお持ちの方なら、60%とか、さらにもっと少量でもいけると思います。ただし、減らしすぎると、うまく火が通らず芯が残ります。気をつけて。

②ちょっと冷まして、種麹を入れて混ぜる

ご飯が炊け、しばらく蒸らしたら、かき混ぜたりしながら40℃くらいまで温度が下がるのを待ちます。米麹菌は、50℃近くなると死滅し始め、70℃にもなると、種麹でさえ失活するので、焦らずしっかり40℃程度まで下げましょう。ただ、下げすぎも、そのあと菌が繁殖しなくなるので注意。

40℃になったら、種麹を米に、まんべんなくふりかけます。私が使った量は、4g。本当は、1〜2gと、もっと少なくてもいいんですが、4合とロットが少ないのと、温度管理に自信がないので、多めに投入。ここは、多めにふりかけたほうが、菌の定着率が上がります。

茶こしでかけるといいらしい。一気にかけきらず、ある程度かけたら、手で刷り込むように混ぜ、またかける、という感じで、でも冷めすぎないよう素早くやりましょう。

③とにかく2日近くがんばってって保温する。

最初は、35℃くらいで12〜20時間保温します。保温は、ヨーグルトメーカーや、低温設定が可能なオーブン等があればベスト。ただし、設定温度ではなくて、米の温度が35℃くらいになるように調節してください。ない場合は、最悪、私みたいに毛布でぐるぐる巻きにして、燃えない程度にストーブの近くに置いておく、とかでもどうにかなります。全部の予定をキャンセルして、米の前で寝ずの番をしたりする必要はありません。

もちろん、温度設定をミスると、うまく米麹菌が定着しなかったり、その結果腐ったりしますが、まあ大体でいいのであったかめに保てていれば、だいたいどうにかなります。お菓子作りなんかよりは、断然温度テキトーでOK

で、保温から20時間くらい経つと、結構米麹っぽい甘い匂いがしてくるので、ここで一回、ほぐすように混ぜます

混ぜ終わったら、今度は更に40℃くらいで12時間保温。この頃になってくると、菌の発酵に伴う熱も出てくるので、とにかく温める、というよりは、保温してあげて、冷めてきたらちょっと助けてあげるという感じで見守ってあげましょう。
※逆に、温度の上がり過ぎにも注意!上がりすぎてるときは、混ぜて空気にふれさせつつ冷ましましょう。

貴重な毛布を米麹に供出して、私は震えて眠ることに。肝心のこめにゃんが全く写っていない。

ところで、結構保温ってのは、手がかかりますよね。友人に相談したところ、どうも米麹ってのは、ペットのように手間暇かけて育ててあげる必要があるようなので、せっかくなら名前をつけてはどうかということになりました。そうすると、甲斐甲斐しく世話をする気もでてきますよね(?)。ということで、友人が「こめにゃん」と名前をつけてくれました

候補としては、「こめ子」とか「こめ男(こめお)」とかも挙がっていたんですが、この時代、やっぱりジェンダーを想起する名前は避けたほうが無難だろうということで、「こめにゃん」に落ち着きました。

④完成

というわけで、規定の時間が経過し、なんかあま~い感じになってたら完成です。米麹っていうと、毛がふさふさと生えているイメージですが、もしそうなってなくても、なんとなく発酵してる感じだったら大丈夫。米麹として完璧な状態でなくとも、とりあえず菌がしっかり繁殖していれば、次の行程に進むことができます。

ちなみに、完成した米麹は、5日間くらいなら冷蔵保存可能。水分含有量が多いので、早めに使い切りましょう。

画像だとわかりにくいですが、うっすらフワフワなのがわかると思います。もっと温度管理とかがちゃんとしていれば、きれいな米麹になったはず。次回に乞うご期待。

それでは、次回は、ついに日本酒醸造のやり方と様子をお伝えします。

matsutet.hatenablog.jp

今回参考にさせていただいた先人の方々

担当:まつてと