ほこり日誌

エジプトは、漢字で「埃及」と書きます。

エジプトの豚肉と「ゴミの街」マンシェット・ナセル

皆さん御存知のとおり、ムスリムの皆さんって、豚肉食べないんですが、カイロでも養豚が行われているところがあります。それがマンシェット・ナセルです。しかし、この街は、通称「ゴミの街」としても知られています

今日は、そんな「ゴミの街」とコプト教徒の話です。

コプト正教会とは

御存知のとおり、エジプトは、アラブ国家ですし、イスラーム国家です。

が、その人口割合を見てみると、9割がイスラム教徒、1割がコプト教徒(キリスト教徒)。コプト教徒がマイノリティーであることは確かですが、十人に一人と考えると、意外に、他教徒の数が多い気もします。

コプト正教会とは、れっきとしたキリスト教の一派です。歴史的には、西暦451年のカルケドン公会議で分立し、以来、現在の主流派であるカルケドン派(カトリックやプロテスタントを擁する一派)とは袂を分かちましたが、古代教会の伝統を守っている歴史ある教派です。

例えば、酒類の製造は、コプト教徒の人々の独占産業ですし、コプト教徒は、イスラム教徒とは機微な緊張関係をはらみつつも、棲み分けつつ共存しています。

「ゴミの街」マンシェット・ナセル

ときに、マンシェット・ナセル(منشية ناصر)という地区が、カイロの東端にあります。「ゴミの街(Garbage City)」として知られており、その人口のほとんどは、コプト教徒。スラムであり、ゴミ処理と養豚を生業にしていることで知られています。

街の様子。至る所にゴミが積み上げられており、手作業で分別している。

カイロ中のゴミがここに運び込まれ、手作業で分別されていきます。聞くところによると、2000万人を数える大カイロ都市圏の約85%が、ここで処理され、そのうち8割程度がリサイクルされるとか*1*2

コプト教徒の知人は、「意外にごみ処理業は儲かる仕事で、マンシェット・ナセルに住む人は、貧しくはないのだ」と言っていましたが、果たしてどうでしょうか。街では、異常な数のハエがブンブンと飛び交い、異臭が立ち込めています

同地区では、ゴミを処理するとともに、集まった残飯を利用して、養豚が行われています(歴史的には、逆らしい。豚のエサのために、ゴミ回収が始まったそうな)。カイロの他の地区では決して見られない光景ですが、ブッチャーでは、豚が店頭にぶら下がっています。

エジプトでは、ゴミ収集を生業とする人たちは、「ザッバリーン(زبالين)」と呼ばれ、各地区を毎日巡回しては、ゴミを回収し、マンシェット・ナセルを含む処理拠点が集まる街に持ち込みます。

私は専門家でもないですし、カイロ在住歴も浅いのでなんとも言えませんが、ごみ処理が、少数教徒の独占産業というのは……。養豚を行っていることも相まって、被差別問題を抱えていると言われています。

日本語でも英語でも、マンシェット・ナセルについて調べると、リサイクルの街!サステナブル!とか、リサイクル率8割はすごい!とか、片面的に扱った記事を多く見かけますが、ちょっと慎重に考えるべきだと思っています。個人の感想ですが。

洞窟教会

さてはて、この地区には、「洞窟教会」と言われる教会があります。天然の岩肌に作られたもので、聖シモン教会を含め、大小いくつかの教会が点在しています。

この教会は、聖書に登場する、山を動かす奇跡を起こした「聖シモン」にちなんで名付けられたもので、1970年代に、ザッバリーンによって建設されました。

カイロ最大の教会として、マンシェット・ナセルのみならず、カイロ中の信仰者を集めています。

訪れる方向けの注)洞窟教会を個人で訪れる際は、Uberドライバーからマンシェット・ナセル行きを断られることがほとんどですので、街の外で降りて、流しのトゥクトゥクを捕まえて向かうことになると思います。距離としては歩くことも不可能ではありませんが、かなり途上国を旅慣れている人でなければおすすめしません。